Crepe : 高精度なピッチ推定を行う機械学習モデル
ailia SDKで使用できる機械学習モデルである「Crepe」のご紹介です。エッジ向け推論フレームワークであるailia SDKとailia MODELSに公開されている機械学習モデルを使用することで、簡単にAIの機能をアプリケーションに実装することができます。
Crepeの概要
Crepeは音声波形から基本周波数(F0)を推定するピッチ推定アルゴリズムです。
ピッチ推定においては、従来、pYINやSWIPEが使用されています。しかし、これらの方法は、雑音環境ではF0を推定するのが難しいという問題がありました。Crepeでは、CNNを使用することで、雑音耐性のあるF0推定機を構築しています。
CrepeはRVCにおける歌唱合成のPitchGuidanceに使用されています。

Crepeが推定したピッチ(出典:https://github.com/marl/crepe)
Crepeのアーキテクチャ
Crepeは1024サンプルの16kHzのPCMを入力し、F0の確率値を出力します。F0は360のbinに対数スケールで量子化されており、それぞれの周波数の確率値が出力されます。最終的なF0値は50Hz (bin = 39)〜2006Hz (bin = 308)の範囲で、確率値をベースに選択します。hop_sizeは10msで、10msごとに1つのF0値を計算可能です。
Crepeはバッチサイズ512で処理します。約5秒分のデータをまとめて処理します。後述する平滑化はこのバッチサイズで行います。
Crepeの前処理では、バッチ単位でPCMから平均を引いた後、標準偏差で除算することで正規化します。正規化したPCMをCrepeのモデルに入力することで、全バッチのF0値を取得します。
Crepeのモデル構造は下記となります。PCM波形に対してConv1Dを繰り返すことで、最終的なF0値を取得します。

出典:https://arxiv.org/pdf/1802.06182.pdf
Crepeの後処理
Crepeの後処理として、どのF0値を採用するかどうかは、ArgMax、WeightedArgMax、Viterbiの三種類から選択することができます。スムージングした出力を得たい場合は、Viterbiアルゴリズムを使用します。
Viterbiアルゴリズムでは、F0値をバッチ内で平滑化します。Viterbiアルゴリズムは、通常のargmaxに、時系列的に前後の値に近い場合は選択されやすいようにするような動きをします。具体的に、F0値が+-12の範囲で選択されやすいようにするTransition行列を作成し、Confidence値とTransition行列を元にt=0〜batch_size-1までの各遷移パターンのスコアを計算、最終的に最も高いスコアの遷移をbackwardで辿ることで最終的なF0値の系列を取得します。
実際のアルゴリズムはlibrosaのViterbiアルゴリズムを参照してください。
Viterbiアルゴリズムを使用せずにArgMaxやWeightedArgMaxでConfidence値を使用した場合、F0値が平滑化されないため、RVCで使用すると、生成された音声に、クリップノイズのような急に高い音が混じります。
RVCでは、F0値と同時に、Periodicityも計算します。Periodicityは平滑化された後のbinのモデル出力の確率値です。Periodicityが0.1未満の場合は無音区間として、F0値に0を入れます。この処理を行わない場合、RVCの出力で無音部分に前の音が伸びたような音が入り、ロボのような声になります。
Crepeの精度
pYINは2014に考案された、波形の相関を用いた方法です、SWIPEは、パワースペクトルの特徴に着目した方法です。
CrepeにはFullとTinyの2つのモデルがあります。Fullのモデルの場合、pYINアルゴリズムよりも高い性能を獲得しています。

Crepeの性能(出典:https://github.com/marl/crepe)
Harvestとの比較
pYINやSWIPEよりも高い雑音耐性と推定精度を持つ、harvestのF0値との比較は下記となります。
CrepeのFullモデルでは、harvestと近い出力が得られます。Tinyモデルでは、無音部分のピッチが変動しますが、有音部分はharvestと近い出力が得られます。

Fullモデル

Tinyモデル
Crepeの使用方法
ailia SDKでPythonからCrepeを使用するには下記のようにします。
$ python3 crepe.py --input input.wav
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